核心区、緩衝区:高美野生動物保護区において、重要な動植物の生息地であるため、立ち入りを禁止とする。
永続利用区:観光客に体験してもらうために開放しているが、野生動植物の生息を妨害してはならない。また、水泳、シュノーケリング、または道具等を使用したウォーターレジャーも禁止とする。
リンク:分区規制事項
高美湿地は高美地区にある誰もが知っている自然環境で、特に近年その名声は高まる一方である。しかし、高美湿地を紹介する前に、まずは湿地とは何かについて紹介しよう。
湿地とは、陸地と水辺の間で、ほぼ一年を通して冠水する土地のことを指す。土壌は長期にわたり水中に浸るため、陸地とは異なった、湿地特有の生物を数多く育んでいる。周知のように、その一単位地区(陸上、水上、あるいは海上)における植物バイオマスまたは炭素の増加量が地球上で最も優れているのである(熱帯生態系と相似する)。常に冠水しているため、異なる様々な種類の生命体を育む。また渡り鳥たちの楽園でもある。渡り鳥は長い距離を渡航する過程の中で、湿地を休息の中継地に選ぶ。さらに、「浄化」も湿地の持つ大きな特徴の一つである。海外の研究では、1ヘクタールの湿地が持つ浄水機能を汚水処理施設で賄うと、約400万台湾元の処理費用が掛かるともいわれている。※しかし、昔の人々は、湿地を生産力皆無の土地と見なし、湿地に工業区や埋め立て地を作ってきた。湿地は、位置する場所によって、淡水湿地と海岸湿地の2種類に大別されるが、淡水湿地と違って、海水湿地には海岸線を安定させる効果がある。さらに、海岸湿地にはもう一つの特徴がある。それは、潮の満ち引きで、水に浸かっている時間や範囲が異なることである。潮の満ち引きは地球の海洋の表面が、太陽と月の引力作用を受けて起こる現象で、新月と満月の時、月と太陽は同一線上に位置するため、両者の引力は相乗効果を生み、潮の満ち引きの差が最も大きくなる。この時を「大潮」と呼ぶ。反対に、三日月の時には、月と太陽は垂直方向に位置しているため、この時お互いの引力はけん制しあい、結果として地球の海洋表面にもたらされる引力作用は弱まる。この時を「小潮」と呼ぶ。
前述のように月の満ち欠けに影響され、ひと月に2回、大潮と小潮がある。さらに、1日の中で平均2回の干潮と満潮があり、その周期は約12時間25分とされている。また、2日ごとに、干潮と満潮の周期は50分ずつ伸びていく。これは地球の自転と月の公転により引き起こされているのだが、満潮時には水に浸かっているが、干潮時には陸地になっている部分を「潮間帯」と呼ぶ。潮間帯に生息している生物(シオマネキなど)は、潮の満ち引きの周期の影響を受け、数多くの興味深い行動を取るようになった。
大甲渓の河口に位置する高美湿地は、海岸の砂が水流によって運ばれ、その砂が堆積してできた植生湿地で、今では台湾で最も特色を持った海岸湿地となっている。そこに生えるたくさんのイセウキヤガラが、高美湿地で最も代表的で、指標的な水生植物である。1932年当時は高美海水浴場として、清水地区において唯一の憩いの場であった。しかし、1976年に台中港が完成したのち、「体積土砂整備地区」計画が立案されることにより海水浴場は閉鎖され、台中港の北防砂堤の突堤が建設され、いまの高美湿地の形成を加速させることとなった。このように高美湿地の地形形成の主な原因には、台中港の北防砂堤の建設が関係しているのである。
高美湿地は台湾中部の沿岸地区、大甲渓の河口に位置しており、気候区分は熱帯季節風気候である。夏は高温多雨、冬には東北からの冷たい季節風が吹き荒らし、気温は低く乾燥している。また、季節風の影響で、降雨が6月から8月に集中している。大甲渓の南岸は砂量が多く、河口も近いため、生態系が豊かで、いい食物連鎖をなしており、渡り鳥の中継地点としての役割も果たし、その生息地としても非常に重要な役割を持っている。高美湿地には、沼地、砂地、干潟、石地、干潮帯など多様な形態の生息地を持ち、このように多様な生息環境が、多種多様な生物を育み、他の湿地には見ない生物多様性を見せている ※。
※参考文献:邱文彥,(1999),「台灣濕地環境的生態教育」,環境教育季刊,第39期,民国88年5月,P23-32