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自然に対する制限

エゾウキヤガラ(イセウキヤガラ)

高い知名度を誇る高美湿地だが、美しい風景や、土地カニや水鳥を有した環境の裏で、その生態系に危機が訪れている。それはイセウキヤガラの生育範囲の減少をはじめとした、湿地の面積縮小、陸地化、外来植物のヒガタアシの侵入、陸ガニの轢死などの問題である。

イセウキヤガラの生育範囲は、1997年ごろから、高美一號堤防と、番仔寮堤防を起点に海側へと、年々後退しつづけている。この二か所の生育範囲は、ヒガタアシとの生存競争および湿地の陸地の影響を受け、年々西側から大甲渓側(北側)へと推移している。さらに、二號堤防の外に生育しているイセウキヤガラも、陸地化の影響を受け、年々、西側と清水大放水口側(南側)へと、ゆっくりではあるが推移している。しかし、この場所も、メヒルギとの生存競争があるため、安定した群落を作ることは容易ではない。以上の結果から、高美湿地のイセウキヤガラは、今まさに生育範囲縮小という状況に直面しているといえる。

ヒガタアシはイセウキヤガラと同じ種に属する塩生植物で、今では世界各国の海岸で確認されている外来種である。ヒガタアシは地下茎の側芽からも萌生する方法で、非常に速い速度で群落を形成する。そのため、高美湿地のイセウキヤガラとアシの生育空間は縮小し続けている。また、ヒガタアシの地下茎は密に絡み合っているため、湿地の地質硬化につながっている。湿地の底生生物の生態系と生物多様性、および水鳥の群れの構造にも、ヒガタアシが侵入してきたことにより変化が起きている。ヒガタアシをはじめとするスパルティナ属の植物を駆除するため、各国が莫大な金額をかけ、大規模な駆除を行っている。しかし、目覚ましい成果は未だ出ていない。侵入してきたヒガタアシを根絶する最も良いタイミングは、侵入してきた初期である。まだ生育範囲が広がりきらないうちに、迅速に対応すれば、完全に根絶することが可能であっただろう。ヒガタアシが2007年に高美湿地に侵入して以来、その生育範囲は急速に拡大し、2016年度初頭には、3ヘクタールを超えた。野生動物保護区の管理という角度から見れば、この現象は高美湿地の生態系と生物多様性に影響を及ぼしている。政府はすでに、ヒガタアシの駆除作業を、企画、実施しているが、その作業が野生動物保護区の管理における目標と規定の範疇の下で行われ、保護区内の生態系と生物多様性の保護に努めてほしい、と願っている。

そのほかにも、夏の高美湿地にはたくさんの観光客が訪れる。皆がそろそろ帰り始める夕暮れ時は、ちょうど土地カニが巣穴の前を離れて、湿地に向かい産卵の準備をしている時でもあるため、堤防沿いの道路での土地カニの轢死が深刻化している。高美湿地周辺の交通網と、堤防沿いの道路の設計上、土地カニが道路を超えて湿地に入れないようになっており、その結果道路上で立ち往生をし、車に轢かれて轢死んだり、アリに噛まれて死ぬことが多々ある。高美湿地の土地カニが、産卵に海に向かっていくのは、夏、農暦の大潮の新月と満月の日から三日後に集中している。最も多くカニの轢死がみられる “ホットスポット”は、高美湿地の北側、番仔寮堤防付近で、毎晩平均で35%近いカニの幼体が、轢死、またはアリに噛まれて死亡している。さらに、路上で轢死する卵を抱えた母ガニは通常の個体の1/2ほどの大きさしかない。これは、土地カニが群れで自身の存続の危機をおのずと感じ、まだ体が発育しきらないうちに成熟し、産卵繁殖を行わざるをえないからであるといわれている。これらは、すべて人間に起因するところが大きい。そのため、湿地周辺の交通網と堤防の堤脚の設計を、改めて見直す必要があると考えている。自然と共生に重点を置き、見つめなおすことで、野生動物保護区が掲げる目標と理念に近づくことができると考えている。


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まず、高美湿地の生態系を保護するため、農業委員会が2004年9月29日の議会で、高美湿地を「高美野生動物保護区」とすることを決定した。野生動物保護区は主にその場所の野生動物及び生息環境を保護することを目的としている。政府は野生動物保護法に基づき、高美湿地をはじめとする、野生動物保護の観点から特に重要と思われる場所を、野生動物保護区、または野生動物にとって重要な生息地区とした。保護区内でには、一般類野生動物の捕殺や植物の採取や伐採が禁じられている。必要があれば、政府には土地の徴収や徴用の権限さえある。内政部営建署は、2007年12月19日に、高美湿地を国の特別保護湿地に指定した。また、台中市政府も、2012年6月22日に高美湿地を核心区、バッファエリアと永続利用区の三区にレベル分けして管理すると告示した(図参照)。観光客は核心区とバッファエリアに立ち入ることができず、研究や調査のためであっても、申請を出し、審査を通らなければ立ち入ることはできない。審査を通過した公文書があって初めて立ち入ることができる。もし、これらの管理区に一般民衆が無断で立ち入れば、規定により5~25万台湾元の罰金が科せられる。

▶ 「高美野生動物保護区」分区規制範囲、及び関連規制事項における公告(中文繁体)
▶ 野生動物保護法(中文繁体)